第1章: キッチンレイアウトの基本
ワークトライアングルの実現で効率的な導線を
皆さんは「ワークトライアングル」という言葉を聞いたことがありますか?これはキッチンのレイアウトを考える上で欠かせないポイントとなっており、「キッチンのシンク、冷蔵庫、コンロを結ぶ作業動線」のことを指します。
冷蔵庫:食材を取り出す・しまう
⇕
シンク:食材を洗う・調理器具を洗う
⇕
コンロ:食材を調理する
この三つの機器がバランスの取れた距離で配置されていると、料理の準備や調理がスムーズに行えるようになり、効率的に作業を進めることができます。
理想的なワークトライアングルの距離の目安は、360cm〜660cmです。これは一般的に2歩~3歩でスムーズに行き来できる距離です。各辺の距離が長すぎると無駄な動きが多くなり、疲れの原因になります。一方、短すぎると調理や配膳スペースが不足し、設備機器が使いづらくなり、作業効率が悪くなります。
3つの距離はキッチンのレイアウトによって変わりますが、各距離を一つの目安として配置を決めてみてはいかがでしょうか?
他にも注意したい配置
- 冷蔵庫の位置:
ワークトライアングルの一部である冷蔵庫の配置は重要なのは言わずもがなですが、冷蔵庫のドアの開き方にも注意しましょう。冷蔵庫の奥行とスペースが合っていないと、ドアが90度までしか開かない場合があり、使いづらくなることがあります。
また、冷蔵庫は料理以外の場面でも使用するので、キッチンの入り口近くに配置しておくことで、買い物帰りで食材をしまう場合や飲み物を取るときにも便利です。
- ゴミ箱の位置:
キッチンは毎日の調理でゴミが出る場所です。デザインを損なわない程度に、しかし使い勝手をしっかり考え最適な場所に設置しましょう。
- 収納の置き方:
食器棚は料理の盛り付けや食器の片付けに使います。コンロ近くに食器棚を配置すると、調理時と片付け時の使い勝手が良くなります。
- コンセントの位置と数:
キッチン家電を使用するために十分なコンセントを配置しましょう。電子レンジや電気ケトル、炊飯器、トースター等、家電の利用シーンをイメージして、最適な位置と数を決めてください。
- ダイニングテーブルの位置:
キッチンのレイアウトによって最適なダイニングテーブルの位置は異なります。リビングとのコミュニケーションを考慮して、テーブルの配置を検討しましょう。
第2章: 間取りの選択: 壁付けか対面式か?独立型かオープンかセミオープンか?
壁付けキッチンか対面式キッチンか
キッチンの種類には、I型やL型、アイランド型などさまざまありますが、それと別の選択肢としてあるのが「壁付けか対面式か」という点です。
- 壁付けキッチン:
壁に沿って配置されるタイプのキッチンです。スペースを有効活用でき、壁面に収納や家電を設置できます。作業スペースが限られることがありますが、コンパクトなキッチンに適しています。
- 対面式キッチン:
カウンターが対面に配置されるタイプのキッチンです。カウンター上で調理や食事を楽しめ、リビングやダイニングとのコミュニケーションが取りやすくなります。オープンな雰囲気を好む方に適しています。
家族の生活スタイルや好み、そもそものキッチンスペースに合わせて選んでみてください。
独立型かオープンかセミオープンか
新しく家を建てる場合やキッチンリフォームを考える場合は、独立型、オープン型、およびセミオープン型の特徴を理解することが大切です。これらはキッチンやリビングの間取りにも直接影響してきます。
それぞれのレイアウトについて下記で詳しく説明します。
- 独立型キッチン:
周囲が壁やドアで覆われている個室タイプのキッチンです。他の空間と明確に区切られている独立型キッチンは、日本では昔から主流の形です。
リビングやダイニングなど他の部屋と完全に仕切られていることで、料理に集中できたり、自分の部屋のように愛着のある空間に仕上げることができます。
○メリット:
・調理作業に集中できる。
・収納スペースを確保しやすい。
・油はねやニオイが他の部屋に広がりにくい。
・外から見えづらく、多少散らかっていても分からない
△デメリット:
・作業中に孤立感を感じることがある。
・配膳や片付けがしにくい場合もある。
- オープン型キッチン:
キッチンとダイニングの間に壁を設けないレイアウトです。開放感があり、リビング・ダイニング側とのコミュニケーションが取りやすい特徴がある反面、キッチンの様子や手元が丸見えになることが難点です。
○メリット:
・開放感がある:広々とした空間となり、家族やゲストとのコミュニケーションも取りやすい
・オシャレなLDKにできる:インテリアの一部としてデザインできるため、おしゃれなキッチンを実現
・家族とコミュニケーションがとりやすい:料理中でも家族と会話できるため、アットホームな雰囲気に
・食事の配膳や片付けが便利:ダイニングテーブルに料理や食器を運ぶのがスムーズに
△デメリット:
・油はねや水はねが気になる:リビングやダイニングに油や水が飛び散ることがある
・リビングやダイニングからキッチンが丸見え:キッチンの片付けや清潔さを意識する必要あり
・収納スペースの問題:オープンキッチンは、収納スペースが少なくなりがちであり、別途パントリーなどの収納スペースを考慮する必要がある
- セミオープン型キッチン:
オープンキッチンとクローズキッチンの中間にあたるタイプのキッチンで、壁で仕切られているが一部から目の前を見渡せるレイアウトです。開放感を保ちながら、必要な部分は隠してくれるバランスの良い設計で、使い勝手が良いと人気を集めています。
○メリット:
・コミュニケーションの促進:オープンキッチンで感じられるリビングとの繋がりだけでなく、クローズキッチンで感じられるお籠り感の両方取りで、家族と会話をしながら調理が進められる
・開放感と明るさ:セミオープンキッチンは、程よい開放感と適度なプライバシーも確保
・子どもの安全確認がしやすい:キッチンの様子が見えるため、小さなお子さんがいるご家庭にも安心
・エンターテイメント性:ゲストを招いた際にも料理の様子を楽しんでもらえる
△デメリット
・料理のにおいや音の拡散:完全にクローズではないため、調理中のニオイや煙がリビングやダイニングに広がることがある
・料理姿が丸見え:セミオープンキッチンは、リビングからキッチンが見えるため、生活感が出やすいことに注意が必要
第3章: レイアウト別の特徴と実例
ここまで、キッチンレイアウトを考える上でワークトライアングルが重要なことや、レイアウト型以外にも壁付けor対面式、独立型orオープンorセミオープン等、色々な選択肢をお伝えしてきました。
この章では、4つの主なキッチンレイアウト型を中心にそれぞれの特徴や選び方をご紹介いたします。
1. 壁付けI型: コンパクトで使い勝手の良いレイアウト
壁付けI型キッチンは、シンク、コンロ、調理スペースが横一列に並んでいるキャビネットの形状を指します。上から見るとアルファベットの「I」に似ていることからこの名前がついています。壁付けI型キッチンは、多くのご家庭やマンション、飲食店などで採用されているスタンダードな形状です。
<壁付けI型キッチンの特徴>
- 省スペースで設置しやすい:
壁付けI型キッチンは広いスペースを必要とせず、狭い場所でも設置できます。
特に壁側に設置する壁付け型は、調理をする人が立つスペースさえ確保すればキッチンとして成立するため、賃貸住宅や一般家庭でよく採用されています。
- シンプルな構造で使い勝手が良い:
シンク、コンロ、調理スペースが横一列に配置されているため、キッチン動線が良く、動きやすい構造とされています。シンプルな故に手の届く距離で料理を完結することもでき、使い勝手はかなり良いと言えます。
- 相場価格が比較的安価:
壁付けI型キッチンの費用相場は平均で50万円~100万円の間です。
他のタイプに比べ、比較的コストパフォーマンスの良い価格帯となっています。
<壁付けI型キッチンの注意点>
- リビングの家族とコミュニケーションが取りづらい:
壁付けI型キッチンは、キッチンの正面が壁側にあるため、リビングやダイニングからキッチンの中が見えにくいです。家族との会話やテレビを見ながらの作業がしにくいことがあります。
- キッチンの中が見えてしまう:
壁付けI型キッチンは、リビングやダイニングからシンクやワークトップ(作業台)の中が丸見えになります。キッチンの片付けや清潔さを意識する必要があります。
- 家事動線が悪くなりがち:
キッチンの横幅が長くなると、横への移動が長くなります。
特に壁付けI型キッチンの場合は、食器棚や冷蔵庫をキッチンの横に置くことがあるため、横への動線が悪くなる可能性があります。
☝要チェック
壁付けI型キッチンでのワークトライアングルの測り方
2. L型:ゆとりある作業スペースと収納力が魅力
L型キッチンは、上から見てLの字型になっているキッチンの形状を指します。直角に曲がるコーナーを中心として片側にシンク、反対側にコンロが配置されているのが特徴的です。
<L型キッチンの特徴>
- ワークトライアングルが効率的:
L型キッチンは、シンクとコンロの位置が近く、動線に優れています。作業スペースの広さのわりに動線を短くすることができ、料理の効率が向上します。
- 作業スペースを広く確保できる:
コーナー部分を含めた作業台の面積が大きくなります。調理中の食材や鍋、配膳スペース、洗い物などを広く確保できます。
- 収納スペースが豊富:
シンク側とコンロ側にそれぞれキャビネットを設置でき、収納スペースを広く確保できます。特に壁付け式のL型キッチンでは多くの吊り戸棚を設置でき、食器や調理道具、食料品なども収納できます。
- 複数人で料理を楽しめる:
スペースにゆとりがあるため、複数人で料理を楽しむことができます。
作業を分担しやすく、邪魔にならない動線が交錯しない構造です。
- 壁付け式と対面式の2つのレイアウトを選択できる:
壁付け式は収納やスペース効率に特徴があり、対面式はオープンキッチンと独立キッチンの良さを兼ね備えています。
<L型キッチンの注意点>
- コーナーがデッドスペースになりやすい:
L型キッチンでは、90度に曲がっているコーナー部分がデッドスペースになりやすくなります。コーナーは奥まっているため、収納スペースとしては使いづらく、頻繁に使用する調味料などは置かない方が良いでしょう。
- 広いキッチンスペースが必要になる:
L型キッチンを設置するには、I型キッチンを設置する時よりも広いキッチンスペースが必要となります。特に対面式のL型キッチンを設置する場合は、リビングルームやダイニングルームに面しているキャビネットの間口の広さに気を付けましょう。
☝要チェック
L型キッチンでのワークトライアングルの測り方
3. 対面アイランド型: 豪華なデザインと多目的利用が可能な配置
対面アイランド型キッチンは、キッチンカウンターが四方が壁に接していない、独立しているタイプのキッチンです。
<対面アイランド型のシステムキッチンの特徴>
- 開放感とコミュニケーション:
四方が壁で囲まれていないため、キッチンで作業しているときに開放感を感じられます。家族や友人とのコミュニケーションが取りやすく、料理中も会話を楽しめます。
- 動き回りやすい:
周囲からどの方向からでも作業ができるため、動き回りやすいレイアウトです。複数人で料理をする場合も窮屈さを感じません。
- レイアウトの自由度が高い:
アイランドキッチンはレイアウトの自由度が高く、好みに合わせてデザインできます。キッチンとダイニングテーブルをくっつけたり、収納や飾り棚を設置したりできます。
<対面アイランド型のシステムキッチンの注意点>
- 広いスペースが必要:
アイランドキッチンを設けるには広いスペースが必要です。スペースに制限がある場合は、他のキッチンレイアウトを検討する必要があります。
- 汚れや臭いが目立つ:
常に整理整頓を心がけないと、汚れや散らかりが目立ちます。調理中の匂いや油ハネが部屋全体に広がりやすいこともあります。特にIHクッキングヒーターの場合、ガスコンロに比べて上昇気流が弱いため、換気扇を回していても臭いや煙をうまく吸い取ってくれません。
☝要チェック
対面アイランド型キッチンでのワークトライアングルの測り方
第4章: キッチンレイアウトの決め方まとめ
キッチンレイアウトを選ぶ際には、まずは家族とのコミュニケーションを考えてみましょう。キッチンを中心にどのようなコミュニケーションを取りたいか、何を大切にするかで選ぶべきキッチンレイアウトは大きく変わります。リビングやダイニングとの関係性を重視し、オープンな空間を好むか、あるいはプライバシーを重視するかによって、最適なレイアウトを選択します。
次に、作業効率や機能性が重要です。収納の配置や作業スペースの広さを考慮し、料理の効率を高めることが必要です。
そして、デザイン性も見逃せません。リビングとの調和や家具との統一感を考えながら、キッチンのデザインを検討します。これらのポイントを押さえて、自分たちに合った理想のキッチンレイアウトを見つけることが重要です。
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